【2026年最新】緊急時対応計画(エマージェンシーアクションプラン:EAP)とは?EAPを中心にスポーツ現場の救護体制を整える方法をわかりやすく解説

広告

【2026年最新】緊急時対応計画(エマージェンシーアクションプラン:EAP)とは?EAPを中心にスポーツ現場の救護体制を整える方法をわかりやすく解説

「緊急時対応計画?エマージェンシーアクションプラン?EAPって何?」

「EAPってどうやって作ればいいの?」

「救護体制ってどう整えればいいの?」

スポーツ現場で、AEDを用意してCPR/AEDの講習会を受講していれば救護体制が整っていて、安全配慮義務を果たしていることにはなりません。

公益財団法人日本AED財団も、スポーツ現場におけるEAPの活用を提案しています。

ジンノウチ
ジンノウチ

今回の記事では、EAPを中心にスポーツ現場でどのように救護体制を構築していくかについてわかりやすく解説します。

緊急時対応計画(エマージェンシーアクションプラン: EAP)とは

EAPとは、Emergency Action Plan(エマージェンシーアクションプラン)という英語の頭文字をとったもので、日本語では、緊急時対応計画と呼ばれています。

ジンノウチ
ジンノウチ

私が所属しているNPO法人スポーツセーフティージャパンでは、救急対応を適切かつ迅速に実施するためには、「ヒト」と「モノ」が円滑に機能するための体制(救護体制)が必要で、どのスポーツ現場でも、この3つ「ヒト」「モノ」「体制」について取り組んで、スポーツを安全にできる環境を整えるために活動しています。

ちなみに、B.LEAGUEのSCS推進チームのSafety(命を守る)の取り組みの中でも、「ヒト」「モノ」「体制」で取り組まれています。

スポーツ現場で救護体制を構築する上で鍵を握っているのが、EAPで、安全配慮義務を果たす上では特に注目されています。

スポーツ現場で想定される緊急時にどうのように対応するかを事前に計画し、初めて会場に来た人が緊急時に遭遇した場合に迅速に対応できるように一目でわかりやすくまとまったシートです。

EAPは1つ1つの緊急事態に対する手順を詳細に明文化されたマニュアルというのはよくある誤解です。

「突然心停止のEAP」「熱中症のためのEAP」「落雷時のためのEAP」などというモノではありません。

突然心停止に特化した手順を詳細に明文化したものは、英語で「Cardiac Emergency Response Plan(CERP)」で、EAPとこのCERPを日本ではごちゃ混ぜになってしまっているのが現状です。

EAPにはあくまでも、緊急事態と判断されてから救急車でスポーツ現場をスムーズに出発し、医療機関へ傷病者を搬送するために必要な情報を記載します。

緊急事態にEAPを見ながら適切に対応ができるようになるべく簡潔にまとめられていなければなりません。

突然心停止や熱中症など、一つ一つの緊急事態に対する手順に関しては、EAPではなく、「危機管理マニュアル」「安全マニュアル」などのマニュアルの中に記載するようにしてください。

ジンノウチ
ジンノウチ

NPO法人スポーツセーフティージャパンの一員として、滋賀県スポーツ協会と一緒に、EAPの作成手順に関するマニュアルを作成しました。

下記のリンク先の滋賀県スポーツ協会のホームページからEAP作成マニュアルとEAPのテンプレートをダウンロードできるのでぜひ参考にしてみてください!

公益財団法人滋賀県スポーツ協会 EAP作成マニュアルについて 2024/12/17

EAP作成時の注意点

EAPを作成する上で注意しなければならないのは、いつ、誰がこのEAPを参考にするかです。

大会主催者側が大会参加者や観客に向けて作成しているのであれば、緊急時に対応する大会側や施設側のスタッフの一人一人の連絡先を載せる必要はありません。

大会主催者側の救護に関する窓口となる救護室などの連絡先だけを載せておけば問題ありません。

このように大会参加者や観客が緊急時に誰に、またはどこに連絡をすればいいのかを考え、必要な連絡先だけを載せるようにしましょう。

チェックポイント

個人情報の開示には注意が必要です

また、平日と休日、祝日、時間帯などによって緊急時に搬送する最寄りの医療機関が異なる場合があるため、必要に応じてEAPを作成する必要があります。

EAPに記載する項目

EAPには、下記の項目を記載することで、緊急事態と判断してからEAPを発動し、迅速かつ適切にアスレティックトレーナー、医療従事者や救急隊員などの専門家へ引渡し、または医療機関へ搬送することができます。

  • 緊急時の責任者、連絡先
  • AEDや担架などの救急器具や搬送器具などの設置場所
  • 会場の住所と目印
  • 最寄りの医療機関の情報
  • 救急車の搬入経路が始トライセップスされている会場の見取り図

他にもスポーツ現場に医師や看護師などのメディカルスタッフが待機している場合には、待機場所や救護室の場所を記載する必要があります。

また、警備員がいる会場の場合には、救急車の誘導について事前に確認しておき、警備員の待機場所などを記載しましょう。

スポーツ現場でのEAPを中心に救護体制を整えるステップ

スポーツ現場でEAPに基づいた救護体制を構築するには少なくとも下記の9つのステップがあります。

ジンノウチ
ジンノウチ

今回は9つのステップのうち、EAPを発動するような緊急事態が起こる前の準備段階(ステップ1からステップ6)について解説していきます。

  1. 競技特性や選手個々の情報収集
  2. EAPの作成
  3. 安全講習の実施
  4. EAPに基づくシミュレーション訓練の実施
  5. EAPの完成
  6. 当日のEAPハドルの実施
  7. 救急対応後のEAP発動報告書の作成と関係者の心的ストレスケア
  8. EAP発動報告書の分析
  9. EAPと安全マニュアルの見直し・改善

ステップ① 競技特性や選手個々の情報収集

各競技で当たり前ですが、ルールが違います。

例えば野球などの多くのスポーツで試合中に選手が倒れた場合には、審判がプレーを止めて審判の指示によってベンチにいるスタッフは傷病者に近づくことができます。

一方、ラグビーでは、セーフティーアシスタントの資格保有者であれば、試合中に倒れていたり、痛がっている選手がいれば、プレー中でも審判に許可を取らずにフィールドの中に入って傷病者に近づくことができます。

また、アメリカンフットボールやラクロス、アイスホッケーなど防具を装着しているスポーツの場合には緊急時にそれらの防具を外すことを想定しなければなりません。

同じスポーツだとしても、年齢や性別、競技レベルなどによって起こっているケガや病気の傾向は異なる場合があるため、事前に調べることが大切です。

選手個々の既往歴や病歴、薬の服用、アレルギーなども迅速かつ適切に救急対応・応急手当をする上では大切な情報になります。

救急隊員や病院の医療従事者にも適切な治療を実施する上では必要な情報になるため、チームとしては一人一人の情報をファイルなどにまとめ、救急隊員などの医療従事者に傷病者を引き継ぐときには提供できるようにしてお来ましょう。

ステップ② EAPの作成

競技特性や選手個々の情報収集してからEAPに記載する情報を入手し、必要なものを揃えながらEAPを作成します。

同じ会場でも練習や試合などではAEDの設置場所などの変更がある場合には、その都度、EAPを作成する必要があります。

EAPは、プロのスポーツ現場などアスレティックトレーナーやスポーツドクターのような専門家がいる現場で作成しなければならないというものではありません。

プロやアマチュアなど競技レベル関係なく、全てのスポーツ現場で作成する必要があるものと捉えてください。

ジンノウチ
ジンノウチ

公益財団法人スポーツ安全協会が運営している「スポあんラボ」でも

EAPの作成方法について解説させていただいています。

学校やスポーツでの突然死をゼロにするために取り組んでいる公益財団法人日本AED財団では、学校での突然死をゼロにするための様々な活動の一環として、学校やスポーツ現場でのEAPを作成し、ダウンロードできるようにテンプレートが用意し、スポーツ現場でのEAP作成ガイドラインをホームページで無料で公開されています。

EAPは下記の4つのステップに沿って作成してみてください。

  1. 必要な情報を収集する
  2. 緊急時アクションフローを作成する
  3. 地図を作成する
  4. 必要項目を記入する
ジンノウチ
ジンノウチ

下記の記事でEAP作成の4つのステップについて分かりやすく解説しています。

ぜひ参考に読んでみてください。

ステップ③ 安全講習の実施

EAPの作成をしたら、選手を含めた関係者に安全講習を実施しましょう。

  • 心停止や熱中症、脳振盪はどのような症状で、どのように対応しなければならないのか?
  • 落雷はどう危険で、いつ避難しなければならないのか、安全な避難場所と危険な避難場所の違いは、いつ再開していいのか?
  • 熱中症を予防するには何をしなければならないのか、日頃の体調管理がいかに重要か?

など、症状や救急対応に関することだけでなく、予防についてもしっかりと安全講習では触れることが必要です。

また、熱中症や脳振盪の症状に気づいていたとしても、無理してプレーを続けてしまう選手もいるため、知識を学ぶだけでなく、行動できるようにチーム内でディスカッションする機会を設けて、チームとして取り組むことが大切です。

ステップ④ EAPに基づくシミュレーション訓練の実施

EAPを作成し、関係者に対して安全講習を実施したら、緊急事態と判断されてからEAPが実際にスムーズに機能するかを検証するためにシミュレーション訓練を実施します。

このシミュレーション訓練は、学校や職場で実施されている火事などの避難訓練をイメージしてもらえたらと思います。

シミュレーション訓練は、少なくとも年に1回実際に練習や試合をする会場で実施するようにしてください。

突然心停止や熱中症などスポーツで起こる緊急事態を想定し、しっかりと知識とスキルを持っている人が、必要な救助器具や搬送器具を使用して適切かつ迅速に対応できる体制になっているかを検証します。

適切かつ迅速に緊急事態に対応できる体制が整っているかは、シミュレーション訓練中に時間を計測しながら検証することが大切です。

例えば、突然心停止の場合には、倒れてから緊急時と判断してEAPを発動してからのAEDの1回目の電気ショックまでの時間が3分から5分以内になっているかを確認します。

EAP発動するまでの時間がかかってしまっているのか、AEDを取りに行き現場に戻ってくるまでの時間がかかってしまっているのかなど、その原因を探るためには時間を測ることで対応が決まります。

シミュレーション訓練には、実際に対応する可能性があるスタッフなどは全員参加する必要があります。そのため、シミュレーション訓練で検証しているときに各スタッフの動きや時間を測定するチェックする人は、実際の現場にいない人や第三者的な立場の人が望ましいと言えます。

私が学生トレーナーとして活動していたアメリカの大学では、アメリカンフットボールはヘッドアスレティックトレーナーが担当し、アシスタントアスレティックトレーナーは基本的にはアメリカンフットボールの活動には関与していませんでした。

アメリカンフットボールにおけるEAPのシミュレーション訓練では、アシスタントアスレティックトレーナーがチェック係を担当していました。

ジンノウチ
ジンノウチ

私が所属しているNPO法人スポーツセーフティージャパンでは、チームや施設、イベント主催者を対象に安全講習とシミュレーション訓練を合わせたEAP研修を実施しています。

自分たちでは安全講習やシミュレーション訓練を実施するのは難しいと考えている場合には、ぜひお問い合わせください!

ステップ⑤ EAPの完成

EAPのシミュレーション訓練を実施して、AEDの設置場所など変更点があればEAPや安全マニュアルを変更して、EAPを完成します。

また、予算の問題など課題はあるけど修正できない場合もあるかと思いますので、修正できていない課題については、忘れないようにしっかりと記録することが大切です。

ステップ⑥ 当日のEAPハドルの実施

活動する当日には、緊急時にどのように対応するかを最終確認するミーティングを実施します。ミーティングと言っても、5分以下が目安で、長くても10分くらいになります。

ジンノウチ
ジンノウチ

この試合前に関係者が緊急時にどのように対応するかを確認するミーティングのことを私が所属しているNPO法人スポーツセーフティージャパンでは分かりやすくするために、「EAPハドル」という名称にしました。

Bリーグでは、2024年のシーズンから試合の前にEAPハドルを開催することを義務化されています。

Bリーグ規定によるEAPハドルの実施概要

  • 原則試合開始20分前に実施
  • 所要時間2-3分
  • 参加者: ホームチームのアスレティックトレーナー、アウェイチームのアスレティックトレーナー、会場ドクター、ホームチームの運営担当者
  • 参加メンバーの自己紹介
  • 固定具、搬送具の設置位置確認(スクープストレッチャーまたはスパインボード、バキュームスプリント、ター二キットなど)
  • AEDの設置位置確認
  • 救急車位置の確認
  • 搬送経路

試合前に誰が、どのタイミングで集まるかは状況が違うため、団体によって異なります。

私がアメリカのラスベガスで活動していた高校ではアメリカンフットボールの試合の30分前に両校のアスレティックトレーナーとホームチームのチームドクターは必ず参加するようになっていました。

NFLの場合には、キックオフの60分前に両チームのメディカルスタッフだけでなく、審判や救急隊員など多くの担当者が参加しています。

また、試合前にいつ、誰が集まるかも微妙に違いますが、呼び方も多少の違いがあります。

アメリカのアスレティックトレーナーの団体であるNational Athletic Trainers` Association (NATA: 米国アスレティックトレーナーズ協会)では、Pre-Event Medical Meetingsと呼んでいます。

また、日本では日本ラクロス協会がSafety Time Outと呼んでいます。

日本ラグビーフットボール協会も参加している菅平での取り組みであるSugadaira AED For Everyone (SAFEプロジェクト)では、SAFE +ONEという名称が付いています。

SAFE +ONE

SAFE+ONEは両チームの代表者(監督やトレーナー)が試合開始の10分前に緊急時の対応について確認するために行う1分間の打ち合わせです。

アスレティックトレーナーなどの専門家がいないどのスポーツ現場でもSAFE+ONEのように両チームの代表者が緊急時の対応について確認する時間をかけてほしいと思っています。

また、アメリカのミネソタ州の高校での取り組みでは、両チームの代表者に選手の健康状態の確認や観客の言動に関するルールの確認などを含めています。スポーツ現場を安心・安全に加えて、よりリスペクトし合う場にするために取り組まれています。

このEAPハドルに参加する関係者は、団体などによって変わりますが、

  • 両チームのメディカルスタッフまたはチームの責任者
  • 試合の審判
  • 大会の責任者
  • 大会ドクター
  • 試合会場の施設管理責任者
  • 救急隊員

などが含まれます。

救急隊員については、日本の場合には市区町村など行政が主催者の場合には試合会場に待機する場合がありますが、ほとんどの試合や大会の会場には待機していない、または民間の救急車が待機しているかと思います。

私が救護スタッフとして活動しているトレイルランの大会では、市区町村が主催者もしくは地域振興のイベントの1つとして位置付けられているため、スタート地点またはゴール地点に救急車が待機してくれている体制を整えてくださっているので本当に助かっています。

また、2026年の夏に開催されたラクロス女子世界大会でもメインピッチには救急車と救急隊員が待機してくれていました。

EAPハドルを実施する際に救急隊員がいない場合には、事前に消防署に行き、EAPについて説明しに挨拶に行くことが大切です。

参考文献